彼と出会ったのは、仕事の中だった。
最初は特別な言葉があったわけでもなく、
ただ「この人と一緒にいると呼吸が楽になるな」と思ったのを覚えている。

忙しい日でも、何気ない会話でも、
まるで”心の温度が整うような感覚”があった。
でも好きになるほど、
私の心には不安も生まれていった。
この関係はどこへ向かうんだろう。
わたしだけが気持ちを深めてしまったらどうしよう。
未来が見えないことが、苦しかった。
だけどある日、ふと気づいた。
不安を生んでいたのは、
彼ではなく、わたしの心のほうだった。
彼の言葉ひとつ、行動ひとつに意味を求めすぎて、
“愛されているかどうか”を常に確認しようとしていた。
そこで、わたしは心の向きを変えてみた。
「もっと愛されたい」ではなく、
“もう愛を受け取っている私”を先に生きること。

ひとりの時間を大切にして、
心が落ち着くことを優先して、
彼の前でも無理に強がらないで、やわらかいままでいること。
そうしているうちに、
彼への執着が静かにほどけていった。
すると、不思議なくらい関係が変わり始めた。
会話は自然で、あたたかくて、
ふたりで同じ未来を見る時間が増えていった。
そしてある日、
彼はごく自然に「これからも一緒にいたい」と言ってくれた。
そのときわたしの胸にあったのは、
歓喜でもなく不安でもなく、
ただ深くて静かな安心感だった。
「大丈夫だ。
わたしはちゃんと愛されていた。」
そう、引き寄せは”願う力”ではなく、
心が満ちたときに、自然と訪れるものだった。
追いかけなくていい。
焦らなくていい。
愛は、あたたかい心にそっと根を張る。
大好きな人と生きていく未来は、
自分をやさしく抱きしめるところから始まる。



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